【TDOC銘柄分析】遠隔医療プラットフォーマーのTeladoc Health, Inc.が良い感じ

【TDOC銘柄分析】Teladoc Health, Inc.がコロナの恩恵を受けまくり
Withコロナ銘柄としていろいろ購入しましたが、Teladoc Health, Inc.(TDOC)が好きなので、ご紹介です。
いくつか観点はありますが、主な理由としては、
- コロナ前から成長率が高く、生活様式の変更により今後も成長が見込まれる
- 医療という注目、かつ景気に左右されない分野であること
- プラットフォーマーであり、価格決定力が高い
- ビジネスモデルがサブスクリプション
といったところです。
まだまだ長期的に伸びる、これからの会社だと思います。
初めて買ったのは5月くらいだったと思います。初めてこの記事を書いたのもそれくらいだったと記憶していますが、保有してから初めて決算を迎えましたので、少し加筆していけたらと思います。
Teladocは米国最大級の遠隔診療プラットフォーマー
そもそもですがTeladocは、2002年に創業した、遠隔医療のプラットフォームを提供する企業です。
要はスマートフォンやパソコンを使ったオンラインで、医療サービスを受けられるというものです。
どんな内容のサービスか、同社のプレゼン資料を見てみると、
日常的な診療・診断や、メンタルヘルス、禁煙まで、幅広く対応しています。
Teladocがどのようにサービスを提供しているか、ホームページに動画がありました。
このビデオではお子さんが夜中に熱を出してしまった例が出ています。
熱を出してしまったけど、夜中でどこも病院はやっていない、、
と困っているお母さんがTeladocのサービスを使って女性医師とマッチングし、
「はい、ベロ出して~」
なんてやって子供が舌を医師に見せ、
それに応じて医師が薬を処方し、家から近い薬局で薬を受け取る、、、
なんて流れが例示されています。
使い方としては、事前にアカウントを作成し、年齢、性別、身長体重、服用している薬なんかを登録しておきます。
情報を登録しておけば、24時間365日オンラインで診断を受けることができるというものです。
すでに世界中に17のオフィスを持ち、175以上の国から患者を得ており、40の言語に対応しています。
医師は男性も女性も登録されていて、希望があればどちらかを選んだり、言語を選ぶこともできます。
もちろんオンラインなので、例えば手術はできなかったりレントゲンが撮れなかったりと、Teladocが行えることは限られています。
しかし、やっぱりちょっと体調悪いな~とかくらいで、病院に行くのって面倒ですし、オンラインで診療してもらって薬を処方してもらって、ちょっと薬局行って薬もらえるなら、その方がいいですよね。
そしてこのコロナ騒動で、病院に行きたがらない人って増えていると思うんですよ。
病院でたくさんクラスターも発生しましたし、わざわざ病院に行くのも特に地方では大変ですから。
これは間違いなく今後の新しい生活様式でも続くと思いますし、オンラインでの会議や飲み会やらと、オンライン〇〇が身近になってきている世の中では、オンライン診療もより人々の生活になじむのではないでしょうか。
市場環境を考えてみる
Teladocが主に狙っている市場は、オンラインで出来ない診療(例えば触診やレントゲン、手術など)を除いた外来診療とメンタルヘルスです。
彼らの試算では、まず外来診療については、3分の1程度がTeladocで代替可能であると考えています。
彼らがターゲットとする外来診療の市場規模としては、約166億ドルと試算しています。
これは、1回の診療を約40ドルと考え、外来診療の3分の1(Teladocがターゲットとする部分)である4億1700万診察を掛け合わせたものです。
40ドル×4億1700万=166億ドル(約1兆7000億円)
さらに彼らは、メンタルヘルスの約8割はTeladocで代替可能であると考えています。
彼らの試算では、メンタルヘルスの市場規模は約116億ドルであると考えています。
先ほどのロジックでいくと、メンタルヘルスの1回の診療を約89ドルと考え、メンタルヘルスの80%(Teladocがターゲットとする部分)である1億3100万診察を掛け合わせたものです。
89ドル×1億3100万=116億ドル(約1兆2500億円)
先ほどの166億ドルと足し合わせると、
166億ドル+116億ドル=282億ドル(約3兆円)/年間
の市場が見込めるわけです。
さらにこれはアメリカ市場のみですので、
282億ドル(約3兆円)+世界市場
がTeladocのターゲットとする市場となるわけです。
アメリカ国内だけで、日本のパソコン市場(約1.5兆円)を上回る規模ですから、そこそこ大きいと言っていいのではないでしょうか。
そして現在のTeladocの地域別売上高を見ると、
まだ米国の売上は4億ドル程度ですから、
米国市場だけでもポテンシャルはまだ278億ドル(282億ドル▲4億ドル)くらいあるわけですね。
さらには売上の80%程度がアメリカ市場ですから、世界の市場を考えればポテンシャルありすぎというわけです。
なお、世界の遠隔医療市場は、CAGR23%で成長すると言われています。
古い資料しか見当たらなかったのですが、2016年時点で、Teladocが持つオンライン診療市場のシェアは約70%程度であったとのことですので、市場のパイ拡大に伴い、売上も拡大するはずです。
環境
オンライン診療の市場環境を考えてみると、
やや規制の多い産業ではありましたが、今回のコロナ騒動に対応するため、各国でオンライン診療を拡大させる方向に向いています。
アメリカでは、トランプ政権が3月6日に、メディケアの対象として、これまで特定の地域のみであったオンライン診療の制限を解除しました。
その後トランプ大統領は、8月4日に遠隔診療を拡大する旨の大統領令に署名しました。
記事によると、電話やビデオを通じた遠隔医療の利用件数は4月最終週に週170万件と、新型コロナの感染拡大前の1万4000件から急増したとのことで、5月以降も高水準をキープしているようです。
ついでに日本でも、安倍首相がコロナ収束後もオンライン診療を拡充していく姿勢を明らかにしています。
このようにオンライン診療という巨大市場は、政府の後押しも受け、今後ますます拡大していくことは確実であると考えています。
政府の政策には乗っかるべきだと考えています。
コロナによる後押しを受けているこのタイミングで勝ち組企業であるTeladocに投資するのは良い選択ではないでしょうか。
そもそも、こうしたオンライン診療の精度がより高くなるためには、通信規格が非常に重要だと思います。
診療中の通信が悪かったら何もできないですからね。
そこで何と言っても2020年は5G元年です。
5Gになれば2時間の映画が3秒でダウンロードできるレベルに通信速度と精度が高くなり、同時に100台の機械とつなげることが出来たりと、通信界で革命が起こるわけです。
まだスマホ等には導入が進んでいませんが、通信規格の変更もまた、オンライン診療の後押しになるのではないかと思っています。
10年前の通信環境だったらとてもじゃないですが難しいと思います。
財務分析
Teladocの財務分析をしてみましょう。
まずまとめると、
- 先行投資の負担が多いため赤字だが、売上高成長率が非常に高い。
- キャッシュは豊富で有利子負債を上回っており、財務基盤は安定的。
- CFから見ても完全に成長ステージ。ひとしきり投資を終え、2019年時点で営業CFは黒字に転換。
といったところですかね。
本当は企業分析のお作法として「競合企業と比較する」のが非常に重要なのですが、Teladocのばっちりな競合であるAmwellは非上場ですし、いかんせんTeladocのシェアが高いため、適切な比較企業がいません。
仕方ないのでTeladocの分析のみとなりますが、そこそこ企業のキャラクターはわかりました。
今後ばっちりな競合で上場企業があれば、しっかり比較していきたいですね。
詳細は以下をご参照ください。
PL
まず簡易PLを見ていきましょう。
業績推移を見ると、
- 非常に高い成長率を誇る。2015-2019の売上高CAGRは55%。
- 原価率は30%程度であり、主に医療サービスのプロバイダーへの手数料。粗利率は70%程度と非常に高い。
- 2019年の売上のうち、84%はサブスクリプションメンバーからの売上。
- 販管費で主な内容は人件費や、広告宣伝費。認知度を高めることを目指した経営戦略か。
- 企業買収や広告宣伝費などの先行投資により、赤字が継続している。
売上増加の要因を見てみると、主に企業買収によるところが大きいです。
Teladocは、2017年にBest Doctors、2018年にAdvance Medical、2019年にはMedecinDirectを買収し、世界中の遠隔医療ネットワークを広げています。
ちなみに2020年にはInTouch Technologiesの買収を予定しています。
- 2019年の売上増加のうち $33.2 millionは、Advance Medical、MedecinDirectの買収が寄与。
- 2018年の売上増加のうち$45.1 millionは、Advance Medical、Best Doctorsの買収が寄与。
- 買収による売上増加を除いたオーガニックベースでも成長しているため、買収との相乗効果で成長が継続。
BS
次にBSです。
バランスシートの状況を見ると、
- 現預金が非常に厚い。ほぼ1年分の売上に相当するキャッシュを保有。
- アセットの半分程度が、企業買収によるのれんによるもの(減損リスクあり)。
- バランスシートが膨らんでいるため、効率性は低い(直近期の総資産回転期間は1057日)
- 自己資本比率は63%、流動比率は652%と、安全性は非常に高い。
- 有利子負債は社債発行によるものであるが、$275millionの償還は2022年、残りは2025年と、まだ余裕があるため、資金繰りに大きな問題はない。
- 2017年、2018年に普通株発行によるエクイティ調達も行っているため、今後も同様の方法での調達を行う可能性があるかも。
といったところですね。
企業買収を盛んに行っているように、キャッシュは潤沢です。
まだ営業CFによる有利子負債の返済は難しい状況ですが、社債での発行を行っているように与信力はあり、デットでの調達はそこまで難しくないでしょうから、財務が急に悪化するようなことはないでしょう。
安全性の比率も良好ですから、大きく問題はありません。
懸念点としては、BSが大きく膨らんでいる要因である、企業買収により増加したのれんの扱いでしょうね。
もしこれらの買収で思ったように収益が上がらない状況となった場合、減損により大きくダメージを負う可能性があります。
CF
最後にCFを見ていきましょう。
- 長年営業CFの赤字が続いていたが、2019年12月期で営業CFの黒字化に成功。
- 企業買収を積極的に行った結果、投資CFは大幅な赤字。2019年12月期の投資CF黒字は有価証券の売却によるもの。
- 投資は営業CFの範囲内で行えず、社債発行や増資でキャッシュフローを賄っている状態。
- 営業赤字が続いているため、簡易EBITDAは赤字が続いている状況。
これから成長する段階である企業のステージに合っているCFの状態です。笑
ただ、ひとしきり買収が済んだように感じるため、一旦投資のステージを終え、営業CFの拡大にステージが移ると思われます。
SWOT分析
TeladocのSWOT分析をしてみましょう。
Strength(強み)
・市場シェア
→2016年時点で、遠隔診療市場において約70%のシェアを持つ。数年間にわたる企業買収により、世界中にネットワークを持つ。
・成長率
→2015年-2019年の平均成長率は55%と、非常に高水準
Weakness(弱み)
・遠隔診療の範囲が狭い
→簡単な診療、メンタルヘルスのみで、触診や外科的治療はできない
・黒字化の目途が不明
→売上高は上昇しているものの、黒字化の目途が立っていない
Opportunity(機会)
・大きな市場ポテンシャル
→低ボラティリティな医療分野、かつ、遠隔医療という未開なポテンシャル市場
・コロナウイルスによる生活様式の変化
→コロナウイルスにより、リモート環境への抵抗がなくなりつつあり、各国政府の法改正や後押しも
Threat(脅威)
・新たな競合
→大手IT企業のAmazonやGoogleが遠隔医療に参入の可能性。Amazonはすでに従業員向けに遠隔医療を提供中。
・コロナウイルスの早期解決による遠隔医療の不要論
→Opportunityの裏返しですが、コロナが幸運にもさっさと消え去って、「遠隔医療?いらねーよ」ってなる可能性もなくはない。
最新の決算
Teladocの直近決算(2020年Q2)は7/29でした。
売上高は予想2.2億ドルに対して2.41億ドル(良い)
EPSは予想-22セントに対し-34セント(悪い)
Q3の売上高ガイダンスは予想2.31億ドルに対して2.75~2.85億ドル(良い)
Q3のEPSガイダンスは予想-0.25ドルに対して-0.35~-0.30ドル(悪い)
2020年通期の売上高ガイダンスは予想8.73億ドルに対して9.8~9.95億ドル(良い)
2020年通期のEPSガイダンスは予想-0.97ドルに対して-1.45~-1.36ドル(悪い)
売上高は良いですが、EPSが良くないです。
但しこれは、一時的な要因(転換社債の一部を帳消したことによる損金であるため)であるため、ビジネス上の問題ではないです。
手放そうかとも思いましたが、ポジションもそこまで大きくないのでホールドを続けます。
売りのタイミングをどう考えるか
いろいろ分析はしましたが、私がTeladocを保有する理由はひとえに、
高い成長性
これに尽きます。
売るタイミングはストーリーが変わった時、つまりは成長性に陰りが見えたタイミングです。
ただ、ここまでプラットフォーマーになれると、決算が良い限りは持ち続けられそうですね。
まだ成長段階の会社ですので、長い付き合いになるかもしれないし、早めのお別れとなるかもしれません。笑
※株式投資はご自身の責任・判断で。